第48話

アイロンってすごくいい匂いがするよな。さして大変でもないし、服はかっこよくなるし、すごく好きだ。

朝からリンゴを食べた。すごく美味しかった。紅茶も美味しかった。朝っていいな。大学4年目でようやく気付いた。ランニングする習慣でもつければよかった。

スタバの店員が可愛かった。ちょっとかっこつけて、お釣りが55円になるように払った。まあ何も起こらないんだけど。どうしてスタバに行ったかというと、卒論をやるためだ。なんかこれも終わりだと思うと寂しい。こうやって一つずつ「今日で最後か」と思うことが増えるんだろうか。かといって、記念に何かしようという気にもなれない。

やりたいことはたくさんあるけど、どうもアクションが起こせない。世界一周した奴らに言わせればこれは勿体ないらしいのだが、俺は世界一周の楽しみを知らないから、損をしている気はしない。毎年アメリカに行く楽しみだって俺しか知らない。大抵の幸せはそんなもんじゃないか。けどバンジージャンプだけは本当にやってみたいと思う。

俺はよく物をなくす。だってさ、例えばUSBをなくすじゃない。見つけるじゃない。「次からは決まった場所に置こう」と思っていい感じの置き場所を探すんだ。そのときUSBをどっかに置くよね?そこなんだよ、失踪事件が頻発するの。だからこれからは、逆に置こうと思ったところに置く。そうすれば「俺だったらここに置くだろうな」という場所を辿れば見つかるはず。きっと先週の俺も同じこと考えたんだろうなあ。

第47話

正月に買ったSurface 3が届いた。かなり安く買えた。福袋だからキーボードの色が選べなくて不安だったんだけど、一番欲しかった朱色が当たった。朱色っていいよね。色もいいけど、名前がいい。初恋の相手の名前と同じ字だ。今年はいい感じだぞ。

最近、午前中はもっぱら映画を観ている。今日はレナードの朝だった。とてもよかった。俺はストーリーが浅いんだけどメッセージ性の強い映画というのがどうも苦手で、素直に感動できるものに走りがちだ。作者の伝えたいこと、見せたいものをピンポイントで受け取りたい。仮に味付けをした方が美味しいとしても、だ。

食事に行く前に、コンビニに行ってコーヒーを飲んだ。どうしてもローソンがよくて、少し遠回りをして駅に向かうことにした。寒くてタバコを吸っていたら、ゴミ袋を取り替えに出てきた店員が中学の同級生だった。シャツにタグが付いていることを指摘された。気付かなかったらと思うと恐ろしい。こういうとき俺は思う。ローソンに行きたいと思った時点で、何かに動かされていたのかもしれない。ありがたい。

人と話しても正直、話題がない。新しい香水とペンダントを手に入れたことくらい。香りというより瓶が綺麗で、アトマイザーがいらなくなったくらいだ。

 

アメリカで買ってきた絵葉書、どう飾ったらいいかわからず、まだ引き出しの中だ。調べてもいい感じのが出てこない。誰かいい方法、知らないかなあ。

第46話

正月が終わった。てか気付いたら明日から学校だし。いや明日は授業ないから月曜日から。月曜日は成人の日だから火曜日から?寂しいけど、このまま正月が続くと体重が100kgくらいになりそうだから、とりあえず来年までさようなら。

今年は思ったよりたくさん年賀状が届いた。俺はちょっとふざけすぎた。というかメッセージが少なかったな。中学生の頃、同じクラスの口数の少ない女の子が好きだった。その子からもらった年賀状のメッセージは量がすごく少なくて、だけど1年をしっかり振り返ってくれてて、めちゃくちゃ嬉しかった。以来それくらいの量が俺の基準になっている。

 

弟が実家に帰ってきている。実は俺と同じ高校に通っているのだが、片道2時間もかかるもんだから、卒業まで都内にある母の実家に居候している。進学が決まって落ち着いたから、今は実家にいる。最近お洒落に興味を持ち始めて、なんだかウザい。モード系がどうとか、レイヤードのシャツがどうとか。この前は椿山荘でのバイト中にスカウトされて、代官山の美容室でカットモデルがどうとか。家族はみんな大学進学祝いに何を送るかで大騒ぎだ。特に実家で同居している父方の祖父母は、母方の祖父母に弟をとられまいと、本当に車でも何でも買ってあげるという勢いだ。俺は誰よりも先にアメリカでネクタイを買ってきたのだが、パソコンやら高級コートやらに埋もれている。金よりハートだ、弟よ。

 

家の裏手にある公園が、少し綺麗になった。俺が屋根の上で漫才やってて穴空けた防災倉庫も、やっと新しくなった。熱を出したさきちゃんの代わりに、お母さんからバレンタインのチョコを渡されたあのベンチもツルツルになった。頂上で縄跳びしてて先生に呼び出された滑り台は古いままだった。

俺が10年以上前に流行らせた鉄棒綱渡バスケを、知らない小学生がやっていた。ちょっと嬉しいけど危ないからやめた方がいいよ。あとゴールは1点じゃなくて2点な。

第45話 謹賀新年

おせちが美味しい。これこそが恵まれた家庭の条件だろう。駅伝を観ながらおせちの残りを食べる。

今回の年越しは、生まれて初めて家の外に出た。幼馴染みと酒を飲みながらカウントダウンをして、カラオケで夜を明かした。20年以上一緒にいて、もう家族みたいなもんだから、初のイベントという感じもあまりしなかった。

始発が動き始めた頃に家に帰って、少し寝て、家族と初日の出を見た。まあこれは小さい頃からの恒例というか、むしろ日の出のために土手まで弟と競争をするのが昔からメインイベントだった。前回初めて負けたのだが、悔しいようで嬉しかったのを覚えている。

初詣は割と楽しかった。おみくじは大吉だったし、俺が先のアメリカ旅行でカメラの修行をしてきたので良い写真がたくさん撮れた。家に帰って年賀状の仕分けをした。とはいえ初日から500枚近いし、毎年一人で仕分けてるし、そのうち俺宛は3枚だし。つまり大事なのは、変わらないということだ。ルーティンだ。幸せにも色々あるんだな。

こういうバラエティを楽しむというのが、今年の目標だ。集中できたときにしっかり暗記するのは勿論だが、なかなか集中できないときにしか覚えられないものもある。案外こっちが大事だったなんてオチもよくある。

 

今日は新年初ショッピングに行く。アウトレットはいつ行ってもワクワクする。作った人すごい。テレビとか雑誌とかもそうだ。あれって「これならみんなワクワクするだろうな」と思って作るのかな。それとも自分のワクワクするものを作ったら、みんながそれにワクワクするのかな。どちらにせよすごい才能だよな。

第44話 帰りたくなるのは何故?

さっき、少しだけ帰国が楽しみだと思ってしまった。今日は友人の大好きなヒューストンテキサンズの試合を観た。夏からずっと計画していて、彼がこの旅行で一番楽しそうな顔をしていただけに、なんていうか申し訳なかったし、それを考えたのが偶然ベッドの上だったので、この気持ちと向き合うのが俺の使命だと思った。

俺は日本が恋しいのか。うーん。どうせもうすぐ帰るし、それはない。むしろあと2週間くらいはこっちにいたいところだ。でもそろそろスーツケースがいっぱいだから良い頃合いかな。どちらにせよ恋しいからではない。

まあ少し考えたら結論は出たんだが、楽しすぎるんだな。正確に言えば、楽しいことはあるのに辛いことがないんだ。柿ピーのピーいらなくね?と思って柿だけのやつ買って食べたら、これはこれでなんか違うな、みたいな。まあでも当然だよね、それが目的なんだし。だから今回の旅行は大成功、ということだな。よかったよかった。(テキサンズ勝ってくれて本当によかった〜)

第43話

いよいよ明日出発だ。フゥー!アメリカフゥー!楽しみで眠れないけど現金が全然ないな。現金全然ないけど楽しみで眠れないな。でも小学生の頃、遠足の前日は眠れないみたいなのは全然なかった。むしろ授業参観で発表する前の日とか。コンクールの前の日とか。自分の活躍が楽しみで仕方ないときは、眠れなかった。「いよいよ俺の凄さを見せつけるときが来たか」みたいな。就活のときもそうだったな。まあ大抵、見せつけられないんだけど。死ぬなよ、って色んな人から言われたけど、俺はここで死ぬほど「アレ」を持ってない。アレって何って、そりゃアレよ。しかし旅行前の脳内は、とてつもないスピードで動く。これだから忘れ物が多いんだ。

何度行っても、飛行機は退屈なんだよなあ。起きたら着いてたってのをやりたいから、今日は徹夜しよう。18時から9時間って、俺が一番元気にしてる時間だもんな。そういや何着ていこう。前回機内食がはねてシミになったから、白はダメだな。やっぱ空港で写真撮ってインスタに載せるだろうし、色の濃いのがいいよな。写真撮るなら、ワックスつけていった方がいいか。でもそのまま洗面所に忘れそうだな。いや待てよ、9時間飛行機に乗るならワックスはやめた方がいいか。とすると明日は朝シャンして、しっかりドライヤーかけないとな。ドライヤー?ホテルにドライヤーはあるのか?いや、いつも自然乾燥しててギシギシになってた記憶がある。じゃあコンディショナーも必要か。確か泊まるとこは浴槽付きだったな。意外とバブとか恋しくなるかも。いやいやならねえよ、恋しくなるのは食事だ。カップ麺?OK。缶詰?OK。米?OK。レトルトカレー?OK。まさかスーツケースの中で爆発しないよな。とりあえず白はカレーから遠ざけ、あ、明日の服!

って感じだった。そういえば服を全部詰めたら、明日着るものがなくなってしまった。自分で言うのもアレだが、こういうところが俺の人間臭いところだ。

第42話

旅行の準備をした。缶詰、ご飯、レトルトカレー、カップ麺。予想以上に食べたくなるんだよなあ。考えた末にナイキのリュックを買った。すごく良い。かっこいいし軽いしたくさん入るし紐少ないし。

今日はとても風が強かった。風が強いの本当に嫌いだ。雲がなくて暖かそうに見えるから薄着で出かけるんだよな。髪がパリパリになるんだよな。後ろに垂らしてたマフラーが前に飛んでくるんだよな。こんな天気の中散歩だなんて犬も御苦労だ。なんて考えてたらすごく懐かれた。すごく悲しい気分で歩いていると、動物に懐かれる。これは絶対に気のせいではない。野良猫も鳩も逃げない。殺意が感じられないとか、そういうことなんだろうか。

まあアレだ、とにかくガッキーがかわいい。スタバの店員もかわいかった。ハーゲンダッツは美味しい。毛布はあったかい。一粒で二度美味しいなんてレベルじゃねえぞ、人生。