第58話

時間が足りない。卒論の締切は明後日、試験も明後日から、卒論発表は来週。悠長に寝ている場合ではない。

 

バイト先で苦情をもらった。俺に対する苦情ではなく、別の部署に対して。詳しいことは書けないけど、客が「前にも使ったがこの工場はマズいだろ〜」と思ってうちの担当に相談したのに「自分で何とかしろ」という態度だったらしい。結局そこに車を預けたらぼったくりという始末だ。あまりにも申し訳ないから俺は誠意を持ってお話を聞いた。聞いた、というのも俺の力じゃどうにもしてあげられないから。

せめて解決策の一つでも教えてあげられればと思って、上司に電話を代わった。だけど「はいはい、伝えておきますよ」というような対応をするだけだった。お前らが客の信用をドブに捨てて、バイトの俺がせっかく取り戻しかけたのに、もう一度投げ捨てた。これってどうなのよ。自分の無力さに腹が立つというのは、これか。

余談だが、前回の日記の後に新しいメガネが届いた。調節したはずなんだけどめちゃくちゃ緩かったから、今日別のメガネ屋に行って調節してもらった。他店で買った物でも、無料で直してくれるんだな。世の中捨てたもんじゃない。次に買うときはこの店にしようと思った。俺がやりたかったのはこっちだ。

 

本屋で心理学の本を読んだ。あれで金、もらえるのか。俺も書いてみようか。小説は流石に無理だから、実用本じゃないとだめだよな。内定先で偉くなれば発言力もつくかな。それだけじゃ足りないし、MBAとかも必要?

なんて考えてたらあっという間に夜だった。とりあえずこの程度の目的があれば、数年は楽しく働けそうだ。やっぱり人を突き動かすのって金だな。