第57話

授業中に眼鏡が壊れた。新しく買ったものが明日家に届く予定だった。なんというタイミングだろう。何かを察したのだろうか。君を捨てるわけじゃないよ。むしろ新しいのより使うよ。

友人が皆卒論に追われている。俺も提出したとはいえ、誤字だらけだし、これから教授のコメントが来るし、意外と余裕がない。明日はそのコメントを聞きに行って、そのあとバイト。嫌な一日だ。眼鏡だって家を出る前に届くわけじゃないだろうし。本当に嫌な一日だ。何が嫌って、なんとなく嫌な予感がする。できればバイトだけでもなくなってほしいところだけど、交代は見つからないだろうなあ。

 

来週でだいたいの授業が終わる。そしたら卒業まで、どうするんだろう。卒業旅行かな。旅行がないときは?寝て遊ぶだけの毎日ってソワソワする。大金を拾ったような感覚だ。拾ったことないけど。

最近毎日終電だ。さすがにもう少し早く帰ろう。親が心配している。こうやって遊びすぎて我に返るのも、あと少しで終わると思うと安心する。早く就職したいという気持ちはそこから来ているのかもしれない。「最近だらけすぎだな。」そう思って、急ぐ必要もないものを徹夜で片付けるようなことが多い。だから俺は時間に追われることが意外と少なくて、暇なときにだらけちゃう。オンとオフをしっかり区別したい性分なのだ。

バイトが嫌なのは、仕事がつまらないからではなくて、常にオンでいろというのがあの業界の性格だからだ。仕事なんか早くなくていいから、たくさん働け。客の言いたいことなんて先読みしなくていいから、聞かれたことにマニュアル通り答えろ。ごもっともだけど、窮屈で仕方ない。俺がやりたいのは、人を怒らせないことじゃない。喜ばせることだ。

 

美味しい寿司が食べたい。誰が何と言おうと、ねぎトロが一番だ。