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第52話

世間はこの週末、センター試験らしい。俺は大学受験をしていない。高校受験しかわからない。あの頃はなぜか自信に満ちあふれていて、合格発表に行かないことすらあった。そもそも俺は小さい頃から、緊張したとき自信満々に振る舞うことで「俺は有利な状況にいる」と自己暗示をかけるクセがある。そんな奴に中学生特有の全能感が身に付いてしまったもんだから、それはそれは酷かっただろう。白くなったカイロをお湯で戻していたら、当時のことを割と鮮明に思い出した。

 

第一志望の試験当日、親父からの置き手紙が嬉しかった。その横には親父が通っていた頃の制服のボタンが置いてあった。家族にはクールに振る舞いつつも、ボタンを握りしめて電車の中で2時間震えていた。半分は武者震いだったけど、本当に本当に怖かった。

初めて見る志望校。小学生の頃から憧れていた。「どうしてもここに通いたい」という欲に邪魔をされるのが嫌で、入試当日までは絶対に行かないようにしていた。学校の名前をネットで調べるようなこともしなかった。思いのほか綺麗な校舎だった。トイレで顔を洗って、精神統一をした。この辺から恐怖は消えていた。教室で不安そうに参考書をめくる奴らを見て、これまた根拠もなく「今日は勝ちだ」と思ったのを覚えている。今思えば試験会場は、高1のクラスの教室だった。そうやって、常に追い風が吹いている時期だった。自分でも感じていたからタチが悪い。試験が終わってからは「受かった」でも「落ちた」でもなく、コンビニからの帰り道のような心で家路についた。手応えはよかった。

翌日、早朝から雨が降っていた。俺はとんでもない雨男だから、受かってたんだと思った。合格発表の前に別の学校の試験を受けて、同じ道を急いだ。発表の日は家族がついてきて、先に学校で待っていた。みんな、怖い顔をしている。「ハッハッハ、まさか。ていうか受かってるじゃん。なーんだ、泣くほど嬉しいと思ってたけどこんなもんか。」それくらい軽いノリだった。15歳なりに、精一杯恐怖と闘っていたんだ。

後で聞いたら、俺の受験番号は「20521」なんだけど「521」だか「251」だか分からなかったらしい。251は無かったのだそう。あと、嬉しいのは後からきた。

 

ずっとクリアできなかったゲームを、一晩かけてクリアした。高校まではどんなに遅くても23時に寝ていたのに。大学は本当にいいとこだから、みんな頑張って夢を掴んでほしい。