第29話

隣の芝生は青い、のか。

言葉にすれば案外小さなことだ。好きな人に彼氏がいたり、出会いの形が悪かったり。その小ささすらも悲しい。俺にとっての宇宙、永遠、無限は、世界にとってはたったこれだけ。何十億人のうちの1人、何十億年のうちの一瞬、どんどん凝縮されていく。彼女にとっての俺も、また同じかもしれない。何年に対する一瞬。分母だけが増えていく割り算だ。

 

追記

同じ所をグルグル回っている。金も時間もガソリンも気遣いも、垂れ流して生きている。貫くべきか、否か。わからない。

本当に怖いのは何だろう。大切な人を失うことか。後悔することか。負けることか。裏切られることか。なんとなく答えが出たと思っては、死角から別の物に刺される。まるで成長しない。男らしいじゃないか。

スーツを取りに行ったつもりが、コーヒー豆を買って帰ってきてしまった。二度手間だよ、やんなっちゃうな。でも二回目のときに寄ったサンマルクカフェのアイスティラミスラテが美味しかった。噛みそうな名前なのを除けば最強だ。だから寄り道はしてみるもんだって、いつも言ってるんだ。

痛みを忘れるには、痛みに慣れるのを待つべきか、なるべく傷に触れないよう気を付けるべきか。みんなどうしてるんだろう。「あ、また思い出した、別のこと考えよう」を繰り返すと、逆に印象づけられてしまう気がするんだ。

あまりの寒さにニット帽を出してきた。最高だ。冬は難しい。沢山の色で自分を守れる一方、色が多くて落ち着かない。