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第2話

築地へ行った。海鮮丼を食べ、その後大江戸温泉、ついでにお台場でポケモンGOという寸法だ。余談だが俺は家を出る前に朝シャンをした。これはもう習慣というか本能みたいなもので、温泉のサウナでようやく朝シャンしたことを思い出したのだが、明らかに無駄だった。言うなれば無駄シャンだ。


定刻通り築地に着いた。日射しが強い。サングラスを持ってきたのだ。流石俺。手提げカバンをガサゴソ。異変に気付いた。レイバンのケースは革っぽい手触りである。これはなんというか、ツルツルしすぎている。取り出してみると案の定、メガネストアのロゴがこちらを見ている。持ってきたのは眼鏡だった。流石俺。


友人と合流し、百余年続く店で海鮮丼を食べる。店の前には先代の板前であるお母さん。東京オリンピックの年には90歳らしい。元気すぎる。昔から孫スキルに定評のある俺は、すぐに打ち解けた。

店前の狭い通りは原付やら台車やらが通るので気を付けてね、もし轢かれたら向かいの建物が外科だからそこに行ってね、と言われた。これが地産地消か。はたまた6次産業化か。いずれにせよ経済波及効果をあの一角に留めて逃がさない。これが新時代のビジネスである。

お母さんの生い立ちはとても興味深かった。彼女は疎開先から東京へ戻った直後に店を継ぎ、つい先日代替わりするまでずっと切り盛りしていたらしい。その影響で包丁を握っていた指の骨が曲がったままになっている。勇退した今でも、節くれ立ったその手で客に日傘をさし続けている。これが「かっこいい」というもんだ。

これまた余談だが、最近は外国人観光客が増えたから、英語が苦手なお母さんもワンフレーズだけ覚えたらしい。「ラストライン、オーバーゼア」あっちに並んでね。俺も校門を出たときに海外テレビ局が殺到していたら使おう。ラストライン、オーバーゼア。

海鮮丼は言うに及ばず。ウニが嫌いな俺ですら、次第に減っていくウニを見て悲しくなった。こんなのは生まれて初めてだ。イクラも美味。イカもカニもエビもホタテも美味。一瞬で食べ終わってしまった。また来よう。お母さんありがとう。俺、毎週これが食えるように精進します。でも「小さい頃にたくさん勉強しなさい」と言われたことが未だに引っかかってます。

大江戸温泉ではサウナと水風呂をひたすら往復した。頭がボーッとしていたのかよく覚えてないので、特別に当時の俺が残したメモを公開しよう。

・温泉を出ると脱衣所の前で、オタク女子が看板を持っている。「野獣求ム」と書いてある。確かに俺は野獣だが、世の中には面食いの野獣もいる。

・当たり前だがカップルが多い。ちょっと悪そうな男と、かわいい女。これがトレンドらしい。俺はかわいい男だから、ちょっと悪そうな女と付き合うのかもしれない。

・今日のトランクス、なんていうか抹茶風味だ。

外に出たら夜だった。馬場で麻雀して終電で帰った。雀荘から駅まで、ダッシュすれば1分半で着く。これは大きな収穫だ。帰り道で見つけた「メゾン エイトアイランド」。大家は八島さんなのかな。野暮なことを言うと、エイトアイランズです。それと室外機から水が漏れてます。

分かりやすくて、それでいて美しい文章が書きたい。